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<連載>『温泉むすめ』と共に歩む 第十回 ~下呂温泉・望川館 熊崎平一郎さん ~

連載開始から、ついに10回を数えるまでになった『温泉むすめ』と共に歩む。そんな節目となる今回は草津、有馬と続き、日本三名泉最後の一湯、下呂温泉は望川館の代表取締役社長を務める熊崎平一郎さんにお話を伺いました。


▲1,100坪の日本庭園が美しい下呂温泉「望川館」

◆下呂温泉と温泉むすめ

――草津温泉、有馬温泉と並ぶ三名泉のひとつとして、下呂温泉の知名度は日本にある温泉地の中でもトップクラスですよね。

熊崎:まさしく、下呂温泉を訪れるお客さんのだいたい8割くらいは下呂の温泉に入ることが目的の方ですね。それが回りまわって、下呂には温泉しかないとまで言われることもあるほどです。

――街のポスターを拝見してもそうですが、最近は様々な取り組みを進められているみたいですね。

熊崎:街歩きやスイーツ、花火などに最近は力を入れています。おかげさまで、特に東海圏では「下呂温泉の花火」も徐々に認知されてきたと感じています。

そもそもとして旅行の仕方が、団体旅行から個人旅行へと移り変わってきています。そういった需要の変化にも、下呂の場合は街歩きを打ち出すことでうまく対応できているのかなと思います。

――旅行の在り方が多様化していくなかで、若い年代のお客さんにアプローチをしようとして重要なことはなんでしょうか。

熊崎:その場合、なんだかんだ言って「インスタ映え」という視点は避けては通れないですね。例えば下呂プリンさんとか、ゆあみ屋さんの「温玉ソフト」とか。店先で写真を撮っている様子もそうですし、ネットにアップされた写真もよく見かけますね。

――今でも充分に取り組みを進められているように感じます。なぜ今、温泉むすめの取り組みを新たに始められたのでしょうか。

熊崎:コロナ禍にあって、なにか変わったことをやりたいと思っていたのが下地にあります。下呂温泉も例に漏れず、コロナが猛威を振るっている期間は休業ばかりでしたし、もちろん、お客さんもほとんど来ませんでしたから。

――変わったこと、として温泉むすめを選ばれるきっかけになったのは、アニメなどのコンテンツにもともと熊崎さんが興味を持っていらしたからなのでしょうか?

熊崎:いえ、私の場合、アニメ系のコンテンツには全くと言っていいほど興味はなかったんですよね。ですが岐阜県内の他の温泉地さんで温泉むすめの取り組みが広がっていくなかで、とあるファンの方から望川館の公式Twitterに「温泉むすめを活用しませんか?」とダイレクトメッセージが来まして。まったく縁のないものでしたから、それから少し調べてみて、これは面白そうだ、というのが発端になりますね。

――実は昔にも一度取り組みの兆しがあったものの、その際にはご縁がなかった、というお話を伺いました。

熊崎:私も後から聞いたのですが、どうやらそうらしいですね。女性をモチーフにしたポスターを下呂温泉が作成し始めたのが6年前からでして。聞けば温泉むすめも今年で6年目のプロジェクトということですし、温泉地としてPRの方向性の舵を切ったタイミングと時期が被っているので、お断りしたのかなと思います。

――それが6年越しに動き始めたのですね

熊崎:当時と今を比べて、温泉むすめプロジェクトの代表である橋本さんと直接、話ができたのも大きいのかなとは思います。昔はエンバウンドさんと懇意にされている旅行代理店の方が話を持ってきてくださったらしくて。話をする上で運営会社さんと代理店さんとでは熱量に雲泥の差がありますからね。その点で、先行で展開されていた飛騨高山の方に橋本さんを紹介していただいて動き出せたというのはありますね。

――実際、変わった取り組みとして面白いことにはなったのでしょうか?

熊崎:最初はまったく分からない0からのスタートでしたから、橋本さんに「その地域で1セット限定となる無償提供のスターターキット(等身大パネル・缶バッジ・ステッカーの3種)をご用意しますので、まずはそちらを置いてみてください」と言われるがままに置いてみることにしたんです。

とはいえコロナ禍ですし、売店の営業時間も変則的でした。どう周知すればいいかと橋本さんに聞いたところ「SNSで営業時間を事前にツイートしましょう」と言われまして、やってみたんです。

普段の投稿なら10件の「いいね」が関の山ですが、その時は500件ほど「いいね」がついたんですよね。純粋に驚きました。

――それは確かに面白いことになりましたね。

熊崎:実はこれだけじゃなくてですね。「発売当日は売店に行列ができますので、対応のご準備をしておいて下さい」と今度は言われていたんですよね。とはいえ、まぁ半信半疑と言いますか。一旅館の売店に列ができるなんて嘘だぁ、くらいに考えていたんです。

それがいざ販売開始当日を迎えると、列ができていたんですよね。自分が知る限り、望川館史上初めてのことで、腰を抜かすかと思いました。

――そのような、ある意味で華々しいスタートを切った後とはいえ、下呂温泉という土地に新しいものが馴染んでいくことに違和感などはないのでしょうか。

熊崎:下呂温泉はもともと観光の街ですから、新しいものや変化に対しては柔軟な考えを持っているんですよね。ここからもっと輪を広げていきたいですね。

◆温泉むすめのなかでの下呂美月という存在

――最初はアニメなどのコンテンツには興味がなかったとおっしゃっていましたが、徐々に取り組みを進めていくなかで、なにか心境の変化はありましたか?

熊崎:いざ仕事として携わってみると面白いんですよね。むしろ先入観がない分、変な障害もないのが大きいとは思います。下呂美月ちゃんもどんどんかわいく見えてきていますし、今では自分の娘みたいにも思い始めています。

新しいターゲット層ということも含めて、従業員にとっても新しい風になっていると思います。

――新しいターゲット層として、ファンの方とのコミュニケーションなども生まれているのでしょうか。

熊崎:私自身、普段は売店に立っているわけではないのですが、「担当者の方と話をしたい」と言ってファンの方からご指名をいただくんです。そうして話を聞いてみると、他の温泉地さんでの取り組みだったり、お手製のグッズを作ってきてくださる方がいらっしゃったり、奉納のグッズをたくさん持ってきてくださる方がいらしたり。様々な目的を持った方が訪れているのだと実感しています。

――グッズの種類も徐々に増えてきていると思うのですが、ファンの皆さんの存在を踏まえたとき、なにか気にかけていることや難しいことはありますか?

熊崎:一番は、ファンの人たちがどういうのを喜ぶのかが分からないことですね。自分の中にはそれが無いものですから。かといってイラストやグッズのアイデアをファンの方たちに聞いてみても、それぞれ様々な意見を持っているようですし。今だと新規グッズは、有志の従業員を集めて相談をしています。

――浴衣姿の等身大イラストや、カエル姿のSDイラストはどちらもかわいいですよね。

熊崎:最初、分からないながらに作ってみて、浴衣のイメージはきれいにハマってくれたなというのが感想です。カエルのSDイラストの時はラフのイメージを結構な数を作ってもらいました。例えば他のデザインでは葉っぱの傘を持ったアイデアなどもあったのですが、それだと下呂は雨が多いというイメージになってしまうような気もして…。いろいろと考えて、話し合って今のデザインにたどり着きました。


▲らぐほのえりか先生から届いた初期のラフイラスト

――よく見ると、それぞれのパネルには声優を担当されている佐伯伊織さんのサインやコメントが書いてあるんですね。

熊崎:佐伯さんがプライベートで当館を訪れてくれたことがありまして。その時はここぞとばかりにサインをしてもらったり、写真を撮ったり、大わらわでした。佐伯さんがいらしていることをさるぼぼ神社さんにもお声がけしたら、すぐにパネルを持ってお見えになって。突然だったのですが、望川館のパネルだけでなく、さるぼぼ神社さんの巫女さんバージョンのパネルにも佐伯さんは快くサインを入れてくださいました。

――佐伯さん演じる下呂美月ちゃんは、温泉むすめのメインユニットであるSPRiNGSに所属して、ライブなどでは楽曲のパフォーマンスも行っています。SPRiNGSの一員に下呂温泉も入っているという点についてはどのように思いますか?

熊崎:まだ下呂美月ちゃんと向き合うのに精いっぱいで、SPRiNGSについては勉強中ですかね。ですがファンの方と話をしていると、やはりメインユニットのメンバーであることが大きな意味合いを持つんだということはひしひしと感じています。

――では、岐阜県内のそれぞれの温泉地さんで温泉むすめの取り組みが広がりつつあることはいかがでしょうか。

熊崎:この前、長良川温泉さんでの取り組みが始まって、岐阜県の5キャラクターが勢ぞろいしましたからね。温泉地同士、担当の方との面識も徐々に広がってきましたし、そろそろオール岐阜でのスタンプラリーなんかも実施できればいいなと思っているところです。

――岐阜県内で温泉むすめの取り組みが広まる中で、ファンの方の動きも見えてくるのでしょうか?

熊崎:ファンの方から話を聞いてみると、例えば奥飛騨温泉さんだったり、飛騨高山さんだったりとセットで下呂温泉に足を運んでくださっているみたいなんですよね。岐阜県に来るファンの方はほとんどの方が下呂温泉に寄ってくださっていて。そういった話を聞けばなおのこと、岐阜県の中で一番かわいいのはうちの子だよな、という思いはありますね(笑)

◆これからの下呂温泉

――改めて、下呂温泉とはどのような場所なのでしょうか。

熊崎:下呂温泉は「温泉ありきの場所」であることは間違いありません。万が一源泉が枯れるようなことがあれば、おそらく街として成り立たなくなってしまうでしょう。ですが、少なくとも私は「源泉が枯れる」といったことは考えません。

――「温泉ありきの場所」として、この先の下呂温泉はどのようになっていくとお考えですか?

熊崎:温泉は日本の文化です。古き良き時代から連綿と受け継がれてきて、今があります。日本の心が忘れられないように、下呂温泉は下呂温泉として在り続けることが大事なのだと思います。そしてもちろん、インバウンドの方も下呂温泉に寄ってくださいますから、積極的に日本文化を世界に発信していく役割も担っていくのではないでしょうか。

――日本の温泉文化を背負って立つのが下呂温泉なのですね。

熊崎:温泉むすめもその窓口のひとつとして、ゆっくりとですが着実に取り組みが進んできています。分け隔てなくコンテンツと融合しながら、『みんなに愛される下呂温泉』になって行って欲しいと、願っています。

取材&文 野口大智

<取材協力>
下呂温泉「望川館」
https://www.bosenkan.co.jp/

温泉むすめ特設ページ
https://www.bosenkan.co.jp/style/12/
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