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<連載>『温泉むすめ』と共に歩む 第七回 ~ 石和温泉 石和温泉旅館協同組合 加藤芳之さん ~

今回で第7回目を数える『温泉むすめ』と共に歩む。本稿では石和温泉旅館協同組合で理事を務めていらっしゃる「びゅーグループ」の加藤芳之さんに想いを伺いました。ストーリー転換の岐路に立っている石和温泉において、その歩みの先にあるのはどのような景色なのでしょうか。



◆個人旅行のニーズと向き合うということ

――石和温泉において、温泉むすめに取り組むきっかけはなんでしたか?

加藤:実は、本当にたまたま『温泉むすめ』というコンテンツを見つけたんです。その当時はイケメン戦国というゲームと笛吹市がコラボしていたタイミングで。温泉地でもアニメだったり、コンテンツだったりを使った面白い取り組みはないかなと探していました。

――加藤さんもそういったコンテンツには明るかったのでしょうか?

加藤:いえ、私自身、アニメやゲームに対して深い知識を持っているわけではありません。『温泉むすめ』についても、たまたま巡り合うまでは存在自体も知らなかったんですよね。
 とはいえアニメの持つ力であったり、そのファンの方々の行動力だったりについては知っていました。やれば成果が出るものだと理解できていましたから、私もそこを原動力にして、信念をもって周辺施設の方にも紹介できました。

――石和温泉のみなさんに広めていくうえで、難しいポイントなどはありましたか?

加藤:やはり最初のうちは『オタク』とひとくくりにされてしまうことも多かったですから、そういう意味では苦労もありました。ですがグッズの売れ行きや、ファンの方たちによるSNSの投稿など、目に見える実績のおかげで少しずつ広がっていきましたね。

――『オタク』という観点では、最近、山梨県を舞台にしたアニメが増えていますよね。温泉むすめも含めて、コンテンツツーリズムとはどのように考えられているのでしょうか。

加藤:アニメやサブカルチャーの土壌がないなかで、『ゆるキャン△』がヒットしたのも大きいのではないでしょうか。県も力を入れだしたのかなとは感じます。そこから少しずつ浸透していって、観光事業者にとってもウェルカムな空気感が作られてきています。おかげさまで、温泉むすめの布教活動もやりやすくなりましたね。

――アニメやサブカルチャーによる集客では、なにか違いがあったりしますか?

加藤:そういったお客さんに限った話ではありませんが、一つの転換点にはなっています。石和温泉は都心から近いですから、これまではバスツアーのような、団体のお客さんに人気の温泉地でした。ですがそれも少しずつ変化してきて、インターネット予約や個人の旅行が増えてきたんですね。すると、これまでとは違ったいろいろなお客さんがいらっしゃるようになる。そうしたなかで旅行に来る人の目的が多様化してきまして。アニメやゲームなども、戦略を立てていかないといけないよね、と考えています。

――団体から個人へとお客さんが変わりつつあるのですね。

加藤:そうは言っても、新型コロナウイルスが蔓延する前までは、海外からの団体はまだまだ多かったですから。なので、サービス内容を変えたりというところはそこまで多くありませんでした。しかしこのような状況になってしまいましたし、否応なしにもサービスの提供方法を変えていく必要にかられていますね。


◆広がる取り組み

――駅にワインの試飲場があることもそうですし、そこに石和紅ちゃんのパネルが設置されていることも石和温泉ならではの取り組みですよね。

加藤:石和温泉駅にあるワインの試飲場は、笛吹市の観光物産連盟が管理しています。事実上、市が管理しているのですが、パネルを置かないかという話を持って行った時にも、これまでの実績があったおかげで話を通しやすかったですね。誘客につながるということや、ファンの行動力を知っていたからこそ、実行してくれたのかなと思います。
 実際、最初に作った50枚のタオルがすぐ売れてしまって。ワインの試飲しか物を売っていなかったあの場所で、新しくお金の動きができたわけですから。すごいことですよ。

――市という観点では、マンホールが設置されたことも、石和温泉のオリジナリティが出ていると感じます。

加藤:笛吹市長はもともと石和温泉観光協会の会長をやっていらした方ですので、観光にも力を入れてくれているんです。市でもやってくれませんか?とお願いをしたら、マンホールの件、二つ返事でOKをいただきました。

――それはすごいフットワークですね。

加藤:『さくら温泉通り』に10個くらい作っちゃえ、という話まで最初には持ち上がったくらいでしたよ。とはいえ、いざやってみようとすると、意外とマンホールを置ける場所って少ないんですよね。歩道になければと写真が撮れないですし。いろいろな条件に照らしてみると、合致するところはあそこだけでした。

――Twitterを拝見していると、あの場所に置いた理由を推測しているファンの方もいらっしゃいましたよね。

加藤:存じております。いやぁ、さすがだな、と思いました。マンホールが設置された駅北口エリアには大蔵経寺というお庭が素敵なお寺があります。境内にSDパネルも設置されていますので、マンホールを訪れたついでに、是非お寺にも立ち寄っていただきたいです。

――実際のところはどうなのでしょうか。

加藤:やっぱり、温泉むすめというコンテンツをきっかけにして、温泉街全体を回ってくれると嬉しいですよね。極端なことを言ってしまえば、私どもの『ホテル花いさわ』に来てくれなくてもいいんです。温泉街全体として、ファンの方に楽しんでもらえるような場所になれればいいなと思います。

――そのために工夫していることはありますか?

加藤:温泉むすめの営業先は、ファンの方が実際に行きやすいところや、本当においしいお店などを当たっています。せっかく行ってもらうなら、ファンの方に楽しんでもらえるようなスポットがいいなとも思いますし。そういう意味で、いろいろなところに行ってもらうきっかけとしてパネルを置いています。

――『里の駅いちのみや』さんだけ、歩きだとちょっと遠いですよね。

加藤:石和温泉は『まえせつ!』というアニメの舞台になった場所だったりもするのですが、なにより担当の方がアニメ好きで。すごく熱く温泉むすめのことを語ってくれたんです。こちらから営業に行く前から、『ホテル花いさわ』の様子を個人的に見に来てくれていたくらいらしくて。そういう方が増えてくれるとありがたいし嬉しいですよね。

――こうして温泉地として取り組んでいく中で、『石和温泉』として共通して持っている想いはありますか?

加藤:各参画施設さんが共通して感じているのは、石和紅ちゃんすごいな、という想いではないでしょうか。ファンの方を呼んでくれますし、そうして訪れるファンの方もみなさんフレンドリーですし。それぞれの施設に興味を持って、コミュニケーションをとろうとしてくれるんですよね。

――なかなかお客さんとコミュニケーションをとることはないのでしょうか?

加藤:これまでは訪れて帰るだけの人が多かったですね。ですがSNSで投稿したり、お店の人と話したり。お店の人たちが、紅ちゃんの呼び込んだお客さんを肌で感じることができているんです。


◆石和紅ちゃんを大事に育てていく

――これまでのお話の中で、一方通行にならないコミュニケーションが場を作っているように感じました。

加藤:接点のなかったお客さんが、親しみを持って温泉地に来てくれる。最初に温泉むすめの話を持って行ったときは、もしかしたら「大丈夫かな」と思われていたかもしれません。ですがそれが今や、逆にウェルカムな状況になっているんですよね。ファンの方たちのことを、応援しに来てくれているお客さんだと感じているんです。キャラクターでラッピングされた車が5台くらい一緒に来たこともありましたが、それを受け入れられる環境になったんだなぁ…と思います。

――ファンの方の中には、キャラクターラッピングの車をはじめ、お気に入りのキャラクターと旅をされている印象があります。Twitterを拝見していると、かなり行動範囲が広いですよね。

加藤:石和温泉の場合は、秩父から来たり、河口湖から来たり。温泉を愛する旅の仕方をしているんだな、と感じます。温泉むすめだけでなく、合わせて観光を楽しみに来てくれている方も多いですね。

――逆に、そういった周囲の温泉地同士でもコミュニケーションをとることもあるのでしょうか。

加藤:河口湖のほうとかでももう少し広がりを見せてくれると嬉しいな…とは思っています。石和温泉との間で路線バスがあったり、車で30分だったり。河口湖とは往来を促進できるようなことを考えていきたいですね。この先、イベントができるようになれば、合同でやってもいいなと思っています。

――いずれは山梨県を巻き込んだ観光につながりそうですね。

加藤:石和と河口湖と。二日間楽しんでもらって、ひとつの鉄板ルートになればいいですよね。そのためにはもう少し、日帰りの観光スポットとかにも参画してくれる施設が増えてくれると嬉しいです。

――では、全国にはいろいろな温泉むすめがいるなかで、石和温泉において『石和紅ちゃん』とはどういう存在なのでしょうか。

加藤:救世主というと言いすぎかもしれないですけど、ありがたい存在ですね。温泉むすめプロジェクトはほとんどお金もかからずに取り組めるのに、お客さんを呼んできてくれる発信力を持っているんです。
 あとは、そうですね。いろいろなアルバイトをしてくれる女の子でもあります。ワイナリーとか駅とかホテルとか。

――石和紅ちゃんを起点として、多様な派生につながっているのですね。

加藤:私自身地元に帰ってきて、代わり映えのしない中で、温泉むすめの取り組みがひとつのやりがいになっているんです。外部的にもいろいろできたり、いろいろな人と知り合ったり。それに、ほかの温泉地の頑張っている姿を見ていると、「自分も頑張らないと」なんて。いい刺激になります。

――この先、紅ちゃんが歩く未来には、どのような景色を描いていらっしゃるのでしょうか?

加藤:石和温泉のどこにいっても旗があったり、パネルが置いてあったり……は、しなくてもいいと思っています。厳選されたところにゆっくり広がっていけばいいですね。
 トップダウンで広めるのは、やろうと思えば簡単にできます。ですがそれではファンの方もつまらないのではないでしょうか。このお店だから、ここに置いた。という明確な理由が見えてくるような発展の仕方をゆっくりとやっていきたいですね。キャラクターを安売りせず、大事に育てていきたいです。

――温泉むすめのなかでも、石和温泉ならでは。を作っていかれるのですね。

加藤:温泉むすめのなかで一番を目指すというより、石和温泉も楽しそうだから行ってみようかなと思える温泉地になりたいですね。


◆『追伸、ありがとう』

――最後に、これだけは言っておきたい!ということはありますか?

加藤:ファンの皆さんが来てくれること、コミュニケーションをとってくれること。いろいろな施設の方から、喜びと感謝が伝わってきています。
私の場合は仕事柄、温泉むすめのファンの方々に直接お礼を言う機会がなかなかありません。ですから、ぜひこの場を借りて、ありがとうと伝えたいです。

取材&文 野口大智

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