story おはなし

温泉むすめショートストーリー 第4話【復刻】

□ファミレス・客席。

 

葉 凪「うーーん……」

店 員「ご注文お決まりでしょうか?」

葉 凪「あ、はいっ! えーっと……そうだなあ」

亜莉咲「……葉凪、決まりそう?」

六 香「あたし決まったー!」

亜莉咲「六香には聞いてない! 葉凪に聞いてるの!」

葉 凪「ご、ごめん、すぐ決めるね! 定番の包み焼きハンバーグかな?

    あ! 季節限定のパスタもおいしそう……!」

椿 月「まだかかりそうですね」

亜莉咲「はあ……。そうね。

    すみません。とりあえずドリンクバー四つで、食事は改めて注文しま……」

六 香「ミラクルジャンボ抹茶パフェひとつー!」

亜莉咲「あとでって言ってるでしょ!?」

椿 月「店員さん、とりあえずその五点で」

店 員「かしこまりました」

亜莉咲「あ、こら! 椿月まで!」

六 香「あたしドリンクバー行ってくるー! 葉凪ちゃん、アイスティーでいい?」

葉 凪「あ、うん。なんでもいいよ」

亜莉咲「話を聞けーっ!」

 

♨       ♨       ♨

 

葉 凪「それじゃ、みんなの飲み物が揃ったところで……。

    petit corollaの初ライブ、お疲れさまーっ!」

六香・亜莉咲「「お疲れさま!」」

椿 月「お疲れさまです」

葉 凪「すごく緊張したけど、お客さん盛り上がってくれてよかったね!」

六 香「それ! ステージから見た景色ヤバかった! 写真撮っとけばよかったなー」

椿 月「衣装もよかったですね。私はともかく、みんなかわいかったですよ」

亜莉咲「いや、あんたも似合ってたから」

椿 月「そうですかね……」

葉 凪「でも、正直言うとまだ信じられないな。わたしたち、ライブしたんだね……」

 

三 人「「「ねー……」」」

 

亜莉咲「……って、違ぁーう! 確かに初めてにしては最高のライブだったけど、私はまだ満足してないから! ふわふわしてる場合じゃなーいっ!」

六 香「『ふわふわして』?」

亜莉咲「『I LOVE YOU』……はっ!?」

葉 凪「ふふっ」

亜莉咲「もー! 六香! 葉凪も笑わない!」

葉 凪「あはは、ごめんね。余韻が残ってて歌詞が出てきちゃう感じ、分かるなーって」

椿 月「……まさに『初めてってFantastic』……」

六 香「ん? 椿月ちゃん、なにか言った?」

椿 月「言ってません」

六 香「言ったよね? ね?」

椿 月「言ってませんってば。ほら、六香ちゃんのパフェ来ましたよ」

六 香「あ、ホントだ! 店員さーん、それあたしでーす!

    めっちゃおいしそー! 写真写真!」

亜莉咲「食事より先にデザートが来た……」

葉 凪「う……ごめんね。わたしがなかなか決められなくて……」

椿 月「まあ、それはいつものことじゃないですか」

亜莉咲「そうそう。この前なんてすごかったのよ。私が何の気なしに『葉凪って、伊香保グリーン牧場にいる動物の中ではなにが一番好きなの?』って聞いたら、真剣な顔で三十分くらい悩んじゃって……」

葉 凪「え、ええっ!? その話するの!?」

椿 月「なんて答えたんですか?」

亜莉咲「馬だって」

椿 月「ああ、葉凪ちゃんは乗馬も好きですもんね」

亜莉咲「そうね。そうなんだけど……話はここで終わらなかったのよ!」

椿 月「?」

葉 凪「あ、亜莉咲ちゃん。そこから先は恥ずかしいから……」

亜莉咲「その晩! 葉凪から泣きそうな声で電話がかかってきて、

    『亜莉咲ちゃん、どうしよう……! わたし、選ばなかった動物さんたちのことを考えると眠れない……!』

     とか言い出して! 私がお社渡りで伊香保温泉に駆けつけて、二人でグリーン牧場の動物たちに謝りに行ったんだから!」

葉 凪「あうう……!」

亜莉咲「椿月、この話どう思う!? 深刻に考えすぎだと思わない!?」

椿 月「うん。面白いですね」

亜莉咲「って反応うすーい!!」

葉 凪「あはは……。でも、いつもより驚いてくれてる気がする」

椿 月「あ、分かりますか。さすがリーダー」

亜莉咲「まったく、二人ともマイペースなんだから……。ちょっと六香! あんたもパフェ食べてないで私に助太刀しなさいよ!」

六 香「んー、待っててー。インスタ用にもう一枚パフェの写真撮るからー」

亜莉咲「まだ食べてないんかい!」

 

♨      ♨      ♨

 

四 人「「「「ごちそうさまでしたー」」」」

葉 凪「えっと、それじゃあ本題を……」

亜莉咲「ふう……。なんか、今日はいつも以上にツッコミに回った気がするわ……」

六 香「んなわけあるかーい!」

亜莉咲「んなわけあるわよ! もしかして今のツッコミのつもり!? それツッコミじゃなくてボケになってるからね!?」

椿 月「おお、いいツッコミ」

亜莉咲「第三者か!」

葉 凪「あ、あのー……」

六 香「おっと、みんな静かにー! リーダーのお言葉なーう!」

亜莉咲「え? あ、ホントだ。ごめん葉凪」

椿 月「すみません」

葉 凪「よかった……。ありがとう、六香ちゃん」

六 香「のーぷろぶれーむ♪」

葉 凪「……こほん。さて、petit corollaとして初めてのライブは無事に成功したわけだけど、次はどうしよっか?」

椿 月「次、ですか」

葉 凪「うん。ライブはすごく楽しかったけど、『楽しかった!』で終わらせずにしっかり次につなげていかないとね」

椿 月「なるほど」

亜莉咲「ふふん。そんなの決まってるじゃない! 次の目標は打倒SPRiNGS!

    同じ兵庫の温泉むすめとして、輪花と楓花に出遅れた分を取り戻すんだから!」

椿 月「スポ根じゃないですか。もっと手堅く行きましょうよ。これからの季節ですと……みかん狩りのPR活動とかしませんか?」

六 香「あたし写真集出したーい!」

葉 凪「ちょ、ちょっと待ってね。議事録作るから……。

    えーっと、亜莉咲ちゃんが打倒SPRiNGSで、椿月ちゃんがみかん狩りのPR活動で、六香ちゃんが写真集。うーん……どれもいいアイデアだね……」

椿 月「あ、この流れは……」

亜莉咲「は、葉凪に選択肢が……! 葉凪、すぐに決める必要ないからね!」

六 香「っていうかー、葉凪ちゃんは何かある? やりたいこと」

葉 凪「わたし? わたしはみんなと一緒になにかやれれば、それでいいなあ」

椿 月「……模範解答ですね」

亜莉咲「……」

六 香「……」

葉 凪「あ、あれっ?」

亜莉咲「葉凪。その気持ちは嬉しいけど、あんたももっとワガママになっていいのよ?」

六 香「うんうん。ストレスとか溜まってない? お茶のカフェインとる?」

葉 凪「なんか心配されてる……!? 別にみんなに遠慮してるわけじゃないよ!」

椿 月「まあ、葉凪ちゃんみたいにおおらかに構えてくれてる人がリーダーだと安心ですね。私たちは各々マイペースですし」

亜莉咲「あんたがそれを言うか……」

六 香「……あ! はいはーい! 名案来た!」

葉 凪「六香ちゃん、どうぞ」

六 香「プチコロでSNSやるのはどう?」

亜莉咲「SNS?」

六 香「うん! ツイッターとかー、インスタとかー。それで写真とかあげまくるの!」

葉 凪「確かに、それなら写真集みたいなものかな?」

椿 月「それに、うまく使えばみかん狩りのPRもできますし……」

亜莉咲「フォロワー数で輪花と勝負もできるじゃない! 確かに名案! ナイス六香!」

六 香「へっへーん。もっとほめろー!」

葉 凪「輪花ちゃんだけ? 楓花ちゃんはSNSやってないの?」

亜莉咲「やってるように見える?」

葉 凪「見えないね……」

六 香「じゃあ、次の一手はプチコロのSNSアカウント開設でけってーい! ついでだし、みんなの個人アカウントも作ってみたら?」

椿 月「私は遠慮します」

六 香「速っ!?」

葉 凪「わたしも、短文で言い切らなくちゃいけないタイプのSNSは苦手で……。ブログでいいかな?」

六 香「いまどきブログ!? でも、アイドルならありなのかな? うーん……」

亜莉咲「ふふ……。六香、ちゃんとツッコミできてるじゃない」

六 香「亜莉咲ちゃん! 亜莉咲ちゃんはやるよね、個人アカウント!」

亜莉咲「私? 私は…………やめとくわ」

六 香「えー!? なんでー!?」

亜莉咲「だって……。

    私、SNSで輪花に絡みに行ってケンカになっちゃいそうな気がして……」

三 人(((炎上しそう……)))

著:佐藤寿昭

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