温泉むすめショートストーリー 第13話【復刻】
□温泉むすめ師範学校・教室棟。購買部――。
――タッタッタッタッ……
彩 耶「はぁはぁ。急げ急げ……購買部名物『ジャンボおにぎり』、ずっと前から気になってたんだよね。今日こそゲットするぞ!」
彩 耶「……って、すでに人だかりができてる!?」
おばちゃん「いらっしゃい! 具沢山のジャンボおにぎり、最後の一つだよー!」
彩 耶「しかも最後の一つ!? 待って待って! おばちゃん、私買いまー……」(ガバッ)
満 美「これくださ~い!」(ガバッ)
彩 耶「えっ? ……満美!」
満 美「ん~? ……彩耶ちゃん!」
二 人「「……」」(パッ)
彩 耶(どっちが先だったかな? 私? いや、満美が先だったような気もする……うぅ……悔しいけど仕方ない。こういうときは……!)
彩 耶「いいよ、満美が食べて」
満 美「え~? ホントに~?」
彩 耶「うん。私は他のおにぎりを買うから」
満 美「やったー! 彩耶ちゃんこそラーの神だよ~。
それじゃ、お言葉に甘えて……」
綾 瀬「――ありがとう、彩耶ちゃん♪」(GET!)
彩 耶「えっ? 綾瀬っ!?」
満 美「あぁ~っ!」
綾 瀬「うふふ♪ ジャンボおにぎり、げっと~♪」
彩 耶「い、行っちゃった……」
満 美「そんな……わたしのラーメンおにぎりが……。
絶望……! ラーの神はわたしを見放した……!」」
彩 耶「そこまで!? ま、満美、元気出して!
ほら、早く買わないと売り切れちゃう!」
満 美「うん……!」
□教室棟・廊下――。
彩 耶「うぅ。結局あれから遅れをとって、残りものしか買えなかったな……」
満 美「結局ピンとくるおにぎりがなくてパンにしちゃった。ジャンボおにぎり
がないなんて、この世には神もレンゲもないよ~……」
二 人「「はぁ……」」
彩 耶「あ……満美」
満 美「ん~? ……彩耶ちゃん!」
彩 耶「あはは。まさか購買部からの帰りも一緒になるなんてね」
満 美「うふっ、ホントだね~」
彩 耶「さっきは残念だったね。おにぎり、綾瀬に取られちゃって……」
綾 瀬「あらぁ、私がどうかした?」
彩 耶「わぁっ!? ……綾瀬!」
満 美「あー、さっきの……おにぎり泥棒!」
綾 瀬「盗んではいないんだけど……」
彩 耶「むぅ……で、今度は何? このおにぎりはあげられないよっ」
満 美「そうだよ~。割り込みするなんて、ラーの神も怒ってるよ!」
綾 瀬「ええ……。確かに申し訳ないことをしたわぁ……」
彩 耶「……へっ?」
綾 瀬「どんなに欲しいものでも、割り込んでまで手に入れちゃあダメよね……。
私も反省して、これを二人に譲ろうと思って持ってきたの」
満 美「ほわぁ~! そ、それは……」
彩 耶「ジャンボおにぎり!」
綾 瀬「最後の一個……二人とも、これが食べたかったんでしょう?」
満 美「食べたい食べたい! 今すぐ食べたい~!」
彩 耶「そ、それはもちろん……。でも、あの綾瀬が素直に反省……?」
満 美「それじゃ、いただきまー……」
綾 瀬「た・だ・し♪ タダじゃあげられないわ♪」(サッ)
満 美「ひゃう!?」
彩 耶「やっぱり!」
綾 瀬「二人にはこのジャンボおにぎりを賭けてクイズ対決をしてもらうの♪」
満 美「クイズ?」
彩 耶「はぁ……またそうやって私をからかって。そんなのやるわけ……」
満 美「はい! わたしやります!」
彩 耶「決断早いね!?」
満 美「先週は6食しかラーメンを食べられず……昨日から心に決めてた……!
今日のお昼はラーメンおにぎりにするって!」
彩 耶「ラーメンおにぎり!?」
満 美「この水筒……中身はお茶ではなく、玉名ラーメンの濃厚豚骨スープ……。
ここに購買部名物のジャンボおにぎりを投入する! それがラーメンおにぎりだよ!」
彩 耶「そ……そうなんだ……」
綾 瀬「満美ちゃんは玉名ラーメンが大好きなのねぇ♪ それじゃ、クイズ対決を始めまーす♪」
彩 耶「あ、いや。そういうことならおにぎりは満美に譲っても……」
綾 瀬「辞退は認めませーん♪」
満 美「彩耶ちゃん! ラーの神にかけて負けないよ!」
彩 耶「なぜ!?」
□屋上――。
綾 瀬「チキチキ! 『日本一のおにぎりむすめは私だ!』クイズ~♪」
彩 耶「おにぎりむすめ?」
満 美「いえ~い!」
綾 瀬「みごと勝利した方には、購買部名物・ジャンボおにぎりをプレゼント! 負けた方には罰ゲームとして、今日一日、私の言うことを聞いてもらいま~す♪」
彩 耶「罰ゲーム!? そんなの聞いてないよ!」
満 美「罰ゲームって何するの~?」
綾 瀬「そうねぇ。まずは私が心ゆくまでぎゅ~っとさせてもらって、次にその柔らかなほっぺに思う存分スリスリさせてもらって、あとは……うふふ♪ どうしようかしらぁ♪」
彩 耶「ひぃっ。は、恥ずかしすぎる……!」
満 美「なるほど……。わたしが食欲なら、そっちは性欲ってわけだね!」」
綾 瀬「せ、性欲ではない……と思うんだけど……」
彩 耶「満美、負けたら大変なことになるけど、平気なの?」
満 美「確かに、負けたらおにぎりを食べるどころか綾瀬さんに食べられる……。
でも大丈夫! わたしにはラーの神の加護がある! ラーメンおにぎりのためならパワーマシマシツヨメで行くよ~!」
満 美「な~んだ。そんなのお安い御用だよ~。ラーメンおにぎりのためなら、パワーマシマシツヨメで行くよ~!」
綾 瀬「それでは早速、第一問! おにぎりはご飯を手で握って作るものですが、2015年の流行語大賞にノミネートされた、大きな海苔でご飯と具を包んで作る、手で握らないおにぎりのことを……」
満 美「はいっ! 『おにぎらず』!」
綾 瀬「満美ちゃん、正解~♪」
彩 耶「は、速い!」
満 美「大好きな食べ物のことならまかせてよ~。一番は玉名ラーメンだけどね!」
彩 耶「うぅ……負けてられないな。綾瀬、次の問題は?」
綾 瀬「乗ってきたわね♪ それでは第二問! おにぎりの呼び方は大きく分けて『おにぎり』と『おむすび』があります。このうち、『おむすび』の語源となったのは古事記に登場する神さまなのですが……」
彩 耶「はいっ!『むすびのかみ』!」
綾 瀬「彩耶ちゃん、正解~♪」
満 美「うぅ~っ。わたしも神さまなのに~」
彩 耶「えへへ。これでも私、巫女さんやってるからね!」
綾 瀬「二人ともいい勝負ね♪ それじゃ、次が最後の問題!」
満 美「最後……!」
彩 耶「これで決着がつくってわけだね……」
綾 瀬「では、運命の第三問! 私、登別綾瀬が一番好きなおにぎりの具は何でしょう?」
彩 耶「えぇっ!? そんなの分かんないって!」
満 美「当てずっぽうで……みんな大好き『ツナマヨ』!」
綾 瀬「ブッブーッ」
満 美「えぇ~っ!」
彩 耶「えっと、北海道といえば……。あ、『鮭』!」
綾 瀬「ブッブーッ」
彩 耶「ダメか……」
満 美「鮭ときたら『いくら』! いや『明太子』? 『たらこ』!?」
綾 瀬「どれもブッブーッ」
満 美「ちがうの~っ?」
彩 耶「ここはシンプルに『昆布』!」
綾 瀬「イイ線いってるけどブッブーッ」
彩 耶「うぅっ……!」
満 美「ヒント! ヒントくださ~い!」
綾 瀬「仕方ないわねぇ。それじゃ一つだけ……ヒントは『大人の味』で~す♪」
満 美「大人の味……?」
彩 耶「わかった、『高菜漬け』!」
満 美「わかった! 高菜漬けときたら『トンコツ』! それか『焦がしにんにく』!?」
彩 耶「満美! それおにぎりの具じゃなくなってる!」
綾 瀬「二人ともブッブッブーッ。はい時間切れ、終了~♪」
二 人「「えーーーっ!」」
綾 瀬「正解は……『わさび昆布』で~す♪」
満 美「わさび昆布……」
彩 耶「えぇっ!? 私さっき『昆布』って言ったのに!」
綾 瀬「昆布は昆布、わさび昆布はわさび昆布で~す♪」
彩 耶「そ、そんなー!」
綾 瀬「あまり知られていないけど、登別は名水の里といわれていて、大正時代から本わさびを栽培しているの。わさび昆布は、北海道産の昆布の甘みと本わさびの新芽の辛みがあわさって、おにぎりの具はもちろん、お酒のツマミにもなる逸品なのよ♪」
彩 耶「へー、知らなかった。
でも、二人とも不正解ってことは……どうなるの?」
綾 瀬「引き分けね。楽しかったから罰ゲームはなしでいいかな♪」
満 美「えー……。引き分け……。わたしのラーメンおにぎりが~……!」
彩 耶「むぅ……」
綾 瀬「ふふっ。安心して。実はここにもうひとつのジャンボおにぎりが……」
彩 耶「――綾瀬。次の問題は?」
綾 瀬「え」
彩 耶「クイズといえど勝負は勝負……引き分けだなんてスッキリしないよ」
満 美「うんうん、このまま終われない……。スープを残して帰れないのと同じようにね!」
彩 耶「いや、スープを全部飲むのは健康に悪いよ!」
満 美「……ほう、そういう価値観ですか。
やっぱり彩耶ちゃんとは決着をつけないといけないみたいだね!」
彩 耶「フッ……。負けないよ! ジャンボおにぎりは必ず私が手に入れてみせる!」
満 美「望むところだよ。わたしだって負けられない……ラーの神のためにも!」
綾 瀬「……えーっと……」
綾 瀬(面白そうだからからかっただけで、ジャンボおにぎりは二人分用意してあるんだけど……)
綾 瀬(……ま、決着がつくなら罰ゲームもできるし、もう少し楽しませてもらいましょっと)
綾 瀬「それでは、続いて第4問!」
彩耶・満美「「よし来ぉーーーいっ!!」」
著:黒須美由記