story おはなし

温泉むすめショートストーリー 第16話【復刻】

□静岡県・熱海市。初夏の旅館(従業員用の別館)・廊下。夜――。

帆南美「今日は初夏の家で花火見物か~。

しっかし、こうして浴衣着て花火見るのも久しぶりやな~!」

心 雪「そうだねぇ。……あれぇ? 絵璃菜ちゃん、もぞもぞしてどうしたの?」

絵璃菜「浴衣って動きにくい……。着替えてこようかな……」

雅 奈「あら。でも絵璃菜さん、そのハイビスカス柄の浴衣、とてもお似合いですわよ」

絵璃菜「そ、そうか……? なんか照れるぞ……」

帆南美「雅奈! うちはうちは~?」

雅 奈「帆南美さんはパンダ柄の浴衣に笹の帯留めがアクセントになっていて、とても可愛らしいですわ」

帆南美「せやろ! この日のために特注したんやで~!」

絵璃菜「おー! すごいなー!」

心 雪「さすがお姫様だねぇ。私はタンスの奥から引っ張り出してきたやつだよぉ」

雅 奈「心雪さんは浴衣と巾着袋が同じひまわり柄ですのね。さりげないコーディネートが素敵ですわ」

心 雪「いやぁ、布が余ったから作っておいただけだよぉ。雅奈ちゃんの浴衣も、紫色の牡丹が大人っぽくてきれいだねぇ」

雅 奈「うふふ。ありがとうございます♪」

帆南美「――あ。ここちゃうか? 女将が言ってた、初夏が待ってるって部屋は」

絵璃菜「初夏ー! きたぞー!」(ばんっ)

 

――パーン!!

 

絵璃菜「おわーっ!?」

帆南美「なんやなんや!? クラッカー!?」

初 夏「熱海へようこそー!

今日は熱海海上花火大会! 最初から最後まで花火づくしで、みんなをとことん楽しませちゃうよー!」

四 人「「「「初夏(ちゃん・さん)!!」」」」

 

♨          ♨          ♨

 

――シャリシャリシャリ……

 

初 夏「よしっ、できた! 心雪ちゃんのかき氷ー!

ねーねーシロップは何にする? イチゴにメロンにブルーハワイ、抹茶にあずきに白玉だんご! 今流行のタピオカだってあるよー!」

心 雪「う~ん、たくさんあって迷っちゃうなぁ~。雅奈ちゃんは何にしたの?」

雅 奈「私は……秘密でぇす♪」(ぱくっ)

心 雪「えぇ~っ。そんなバナナぁ~」

雅 奈「うふふ……。縁側で食べるかき氷って、最高ですわねぇ……♪」(ぱくぱくっ)

心 雪「ん? なんか様子がおかしいような……」

初 夏「あー! 雅奈ちゃん、さてはそのかき氷――」

 

――しゃくしゃくしゃく!

――ダンッ!

 

絵璃菜「食べた! えりなの勝ちー!」

帆南美「うぅ。頭が……。頭がキーンて……!」

初 夏「? 二人ともどうしたのー?」

絵璃菜「かき氷の早食い対決してたんだー!」

初 夏「あはは! なーんだ! どうりで静かだと思ったよー!」

心 雪「かき氷を食べると、頭がキーンってするもんねぇ。私も子どもの頃よくなったよぉ」

帆南美「誰がガキや! うぅ~、めっちゃ悔しい~!

絵璃菜、もっかい勝負や。今度は罰ゲームつきやで!」

絵璃菜「罰ゲーム?」

帆南美「せや! 罰ゲームは……『勝った人に帯回しされる』や!」

絵璃菜「おびまわし?」

初 夏「な、なんとッ! 帯回しッ!?」

心 雪「帯回しと言えば、『お許しください、お殿様!』、『よいではないか、よいではないか』、『あ~れ~!』のアレだねぇ」

雅 奈「んもぅ……。帆南美さんのえっち……♪」

帆南美「にっしっし! うち、一生に一度やってみたかったんや!」

絵璃菜「よくわかんないけど、いいぞー!」

帆南美「よっしゃ! ほんなら初夏、かき氷二つ頼むで~!」

初 夏「オッケー!

……って、ああー!? かき氷用の氷がなくなっちゃったー!!」

帆南美「な、なんやて~!?」

初 夏「でも大丈夫! すぐ用意するね!

それではみなさん、あたしにご注目! 今は何も持っていないただの左手ですが、ここに不思議な布をかけて数字を数えると……。いち、にの、さん……はいっ!」

 

――バサバサバサバサッ!!

 

絵璃菜「わわっ!?」

初 夏「あれれー? 鳩さんになっちゃった!」

帆南美「びっくりした~……。何してんねん!」

初 夏「うーん。なんでかなー。確かに氷を持ってきたんだけどなー。この部屋のどこかにあるはずなんだけどなー」

心 雪「この部屋のどこか? ……あぁっ! みんな後ろ~!」

帆南美「え?」

絵璃菜「わあー!」

雅 奈「あら。テーブルの上に……」

帆南美「めっちゃデカい氷の塊がある~~~!?!?」

初 夏「あはは! びっくりした!?」

帆南美「なんでなんで!? さっきまで何もなかったはずやのに、何がどーしてこーなってんねん!?!? ちょ、初夏! 教えてーや!!」

初 夏「あはははは! 今の帆南美ちゃんの顔、面白ーい!」

帆南美「! ……面白い? うちの顔が?」

初 夏「うん! いやー、そこまでびっくりしてくれると頑張って準備した甲斐があるよー!」

帆南美「……ほぉ~。人の顔つかまえて面白いとは、よう言うてくれたなあ……」

初 夏「へっ?」

帆南美「――絵璃菜。かき氷の早食い対決はひとまず休戦や。まずは初夏から……帯回ししたる!」

初 夏「え」

帆南美「初夏! 覚悟しーや!!」

初 夏「えっ!? ちょっと待っ……。きゃー! いやー!」

 

――ダダダダダダダダッ!!

 

絵璃菜「お……? 初夏と帆南美が部屋の中でダッシュ始めたぞ……」

心 雪「あれあれ。困ったちゃんだねぇ」

雅 奈「うふふふふ♪ このかき氷、ほぉんとおいしい……♪」

絵璃菜「わー! 雅奈の顔が真っ赤だー!」

心 雪「雅奈ちゃん、もしかしてそのかき氷にかけたのって……」

雅 奈「日本酒でぇす……♪」

心 雪「あはは……。こっちも困ったちゃん……」

 

――ダダダダダダダダッ!!

 

帆南美「初夏~! 待て~い!」

初 夏「絶対やだーっ!! ……ああっ!?」

帆南美「にしし。隅に追いつめてやったで~」(にじりにじり)

初 夏「あわわ……。お許しください、帆南美さま……!」

帆南美「にっしっし! よいではないか! よいではないかー!」

初 夏「あ~~れ~~!!」(くるくるくる~

雅 奈「きゃーーー♡」(ちらっ)

絵璃菜「きゃーーー♡」(ちらっ)

心 雪「きゃーーー♡」(ちらっ)

初 夏「みんな……。あたしを……あたしを見ないでーっ!!」(くるくるくる~

帆南美「にーっしっしっしー!」

 

――フッ。

 

帆南美「! 電気が消えた!?」

初 夏「――なんてね」

四 人「「「「??」」」」

初 夏「いくよー! 特大スターマイン!!」

四 人「「「「!?!?」」」」

絵璃菜「ま、まぶしいー!」

帆南美「花火や! 花火みたいになんか光ってるで!?」

雅 奈「あら? でもよく見たらあれは……」

心 雪「初夏ちゃんだよぉ! 初夏ちゃんが着てる全身黒タイツの上で……ライトがチカチカしてるんだよぉ~!」

初 夏「これを着ればいつでもどこでも夏気分! 花火ガール参(上)……」

 

――ドドーン!

 

全 員「「「「「あーーーーーっ!?!?!」」」」」

初 夏「花火始まっちゃったー!」

帆南美「みんな、縁側に集合や!」

絵璃菜「おー!」

初 夏「いっそげー!」

帆南美「ん? ちょい待て、初夏。その全身黒タイツのまま花火見るんかいな?」

心 雪「花火柄の浴衣、かわいかったのに~」

初 夏「えー。だってこれ脱ぐの大変なんだもーん。LEDライト縫い付けてあるし、配線とかあるしさー。浴衣から見えないようにするの苦労したんだからー!」

雅 奈「うふふ。初夏さんらしいですわぁ……。でも……どうして私たちのためにそこまで……?」

初 夏「だって熱海の花火は一年に何回もあるけど、今日の花火は今日しかないでしょー? だからあたし、今日がみんなにとって忘れられない花火になるように、いーっぱい楽しんでもらおうって決めてたんだー!」

帆南美「何いってんねん! うちらが一緒なら何してても楽しいに決まってるやん!」

絵璃菜「うん! えりなも楽しいぞー!」

心 雪「そんなの、あたり前田のクラッカーだよぉ」

雅 奈「私も楽しませてもらってますわぁ……♪」

初 夏「みんな……。な、なんか照れるなー!」(もじもじ)

帆南美「あ!! せや、かき氷食べへん?」

絵璃菜「食べる食べるー!」

心 雪「いいねぇ。私のかき氷も溶けちゃったし。シロップ何にしようかなぁ」

雅 奈「縁側でかき氷を食べながら花火を見る……。夏ですわぁ……♪」

帆南美「初夏も食べるやろ?」

初 夏「えっ? んー、あたしはやめとこうかなー……」

帆南美「はぁ~!? なんでや! 一緒に食べようやー!」

初 夏「うーん……。でもなー、ちょっとなー……」

帆南美「? 初夏、どないしたん?」

初 夏「いやー、あたしずっとこの姿でいたからさー……。

やっぱり今のうちに……。あーでも花火見たいしなー……」

帆南美「?? もしかして具合でも悪く――」

初 夏「……どーしよー……トイレ行きたーい……」

帆南美「…………。

知らんわ! はよ行けやーーー!!」

著:黒須美由記

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