story おはなし

温泉むすめショートストーリー 「Adhara 1st LIVE –SEIRIOS- ☆中編☆」

★こんぴら桃萌(鍛冶屋の見習い職人)編

鍛冶屋の見習い職人「ある鍛冶屋に、不器用な職人見習いがいました」
鍛冶屋の見習い職人「見習いは非力で、しかも不器用。およそ鍛冶屋には向いていない少女でした。当然、彼女が打つ武器の出来はひどいものでしたが、不思議なことに、鍛冶屋の先輩職人たちが少女を叱ることはありませんでした」
鍛冶屋の見習い職人「なぜなら、彼女には生まれ持った愛嬌があったからです」
鍛冶屋の見習い職人「彼女が工程を間違えたとき、笑えばその場をしのげました。彼女が刃先を潰したとき、泣けばその場を誤魔化せました。それもこれも、彼女の愛嬌がなせる業でした」
鍛冶屋の見習い職人「そして……彼女は、そんな自分のことが嫌いだったのです」

×    ×    ×

鍛冶屋の見習い職人「そんなある日のこと、彼女のいる鍛冶屋に美しい女騎士がやってきました。その美しさたるや、鍛冶屋中の職人がふと手を止めるほど。見習いの少女は、『お星さまが地上に降りてきたみたいだ』と思いました」

アダーラ「この村で最も美しい刀を作って欲しい。魔物を退治したいの」

鍛冶屋の見習い職人「『アダーラ』と名乗った女騎士はそう言いました」
鍛冶屋の見習い職人「星のように美しい女騎士に相応しい刀。鍛冶屋の職人たちは全員で知恵を絞ったものの、全く名案が浮びません。
そこで職人たちは、見習いに試作品の刀を作らせ、アダーラのもとへ送ることにしました。
もちろん、職人たちは見習いの刀がアダーラの眼鏡にかなうと期待していたわけではありません。彼らが期待していたのは、見習いが持ち前の愛嬌で女騎士の望みを聞き出してくれることでした」
鍛冶屋の見習い職人「見習いは適当に刀を打ち、いつもの笑顔で騎士のもとへ持って行きました」

アダーラ「ふむ……。これ、あなたが打ったの?」
鍛冶屋の見習い職人「はい! ご不満な点があれば遠慮なく申しつけてくだせぇ!」
アダーラ「……。あなた、失敗を恐れて全力を出せないのね。でも、これでいいわ」
鍛冶屋の見習い職人「えっ……?」

鍛冶屋の見習い職人「アダーラは驚くほど呆気なく刀を受け取り、魔物退治に出かけていきました。意外な形で女騎士の発注に応えることができた鍛冶屋の職人たちは胸をなで下ろしましたが、見習いだけは、嫌な予感を覚えていました」
鍛冶屋の見習い職人「果たして、アダーラは魔物退治に失敗し、深手を負って村に戻ってきたのです。失敗の原因は、戦いの最中に刀が折れたこと」

鍛冶屋の見習い職人「……笑ってしのぐことも、泣いて誤魔化すこともできない、明確な失敗でした」
鍛冶屋の見習い職人「それでも、アダーラは見習いに微笑みかけます」

アダーラ「気にしなくていいわ。失敗したら、もう一度挑戦すればいいの」
鍛冶屋の見習い職人「そんな……。そんな風には思えません……! 下手したら命がなくなってたかもしれないのに……」
アダーラ「そうね。私は命を賭けた。それで、あなたは?」
鍛冶屋の見習い職人「……! 分かりやした!」

鍛冶屋の見習い職人「見習いの少女は脇目も振らずに鍛冶屋に戻り、二本目の刀を打ち始めました」
鍛冶屋の見習い職人「仕上げるべきは命を賭けた本気の一本。しかし、真剣に仕事に向き合ってこなかった彼女がすぐにいい刀を打てるはずがありません。それでも、見習いの少女は今の全力を注いで一本の刀を仕上げました」
鍛冶屋の見習い職人「できあがった刀は、それは不器用な形をしていましたが……それこそが、騎士の望む美しさだったのです」

アダーラ「私の本気に、本気で応えてくれる人。私はあなたを探していたの」

鍛冶屋の見習い職人「そうして見習いは何事にも本気で挑む気持ちを思い出し、アダーラと旅に出るのでした」


★乳頭和(魔女)編

魔女 「星の光も届かない、暗い暗い森の奥。そんな場所に、恥ずかしがりやの魔女が住んでいた」
魔女 「その森は『魔女の森』として恐れられていた。森には不思議な霧が広がり、迷い歩くうちに森の外に戻されてしまうのだ。
魔女を退治しようと幾人もの冒険者が森に足を踏み入れたが、誰ひとり、魔女の姿を目にすることすら叶わなかった。中には対話を試みようとする無害な者もいたが、魔女は得意の変身魔法で自らを鳥や獣の姿に変えて彼らを遠巻きに見守るばかりで、決して自分から姿を見せようとはしなかった」
魔女 「なぜなら、彼女は自分のことが嫌いだったからだ」

×    ×    ×

魔女 「そんなある日のこと、森に新たな冒険者が訪れた」
魔女 「美しい少女だった。彼女はまるで星そのもののように光を操り、森の中を確かな足取りで進んでいく。魔女はいつものように霧の魔法で侵入者を追い返そうとしたが、冒険者は歩みを止めなかった」
魔女 「それどころか、魔法を目の当たりにした彼女は森に向かって自らの名を名乗った」

アダーラ「はじめまして。私の名はアダーラ。星の使者です」
魔女 「……何しに来たの」

魔女 「魔女は思わず、しかし姿は隠したままに尋ねた」

アダーラ「かわいい声……。あなたに私の光を届けに来たわ」

魔女 「――それは、久しく触れてこなかった、他人からの真っ直ぐな好意だった」
魔女 「魔女は怖くなった。こんな私に好意を寄せるなど、なにか裏があるに違いない。そう思った。魔女は自分に自信がなく、自分が好意に値する存在だとは思えなかったのだ」

魔女 「光なんていらない。森の動物たちがあなたに牙を剥く。早く戻ったほうがいい」
アダーラ「それなら、まずは動物たちと友達になるわ」
魔女 「……。警告はした」

魔女 「いよいよ魔女は手段を選ばずに侵入者を追い返そうと試みた。魔女は自らの姿を巨大な狼に変身させて、うなり声をあげながらアダーラに襲いかかったのだ」

魔女 「……しかし、アダーラは不敵に微笑んで言った」

アダーラ「見つけたわ、かわいい魔女さん」

魔女 「暗い森の中に、一筋の星の光がきらめいた。アダーラの放つまばゆい星の光が、頑なだった魔女の心を溶かしていくようだった」

アダーラ「本気で追い返すつもりなら、私を噛み殺せばよかったのに」
魔女 「そんなこと……できない」
アダーラ「そうね。どんな姿に変わっても、あなたは優しい女の子。私は見失わないわ。
 さあ、私についてきて。外の世界を見せてあげる」
魔女 「……」

魔女 「魔女はひとりが好きだった。ひとりでいれば、誰にも忘れられなくてすむからだ。
魔女は変身が好きだった。変身していれば、ありのままの自分を出さなくてすむからだ。
暗い森の中は、そんな彼女が暮らすのに一番心地いい場所だった」
魔女 「けれど――今の彼女には、もっと心地いい場所ができてしまった」
魔女 「自分の存在を初めて認めてくれた人」
魔女 「その背中を追うために、魔女は森を出る決心をしたのだ」

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