story おはなし

温泉むすめショートストーリー 「カステラの誘惑 ~伊乃里、心の声~」

○伊乃里の家・台所(夜)
伊乃里「(あくび)ふぁ……もう寝なきゃ」
伊乃里「ちょっとおなかすいてるけど、夜の間食なんてもってのほかだし……麦茶で我慢しよっと」
伊乃里「麦茶~麦茶~……はっ! カ、カステラが……あるッ!(悲鳴のように)」
  伊乃里、唾を飲み込み――
伊乃里「ごくり……!
 お、美味しそ(う)いやいや、こんな時間だよ? ああ……でも、なんでかな……お昼に見るより輝いてるような……!」
天使かがみの声「(おぼろげに)聞こえますか……? 伊乃里さん……聞こえますか……?(徐々にハッキリしてくる)」
伊乃里「(驚き)この声は……!?」
天使かがみ「わたしはあなたの心の中の天使ーーエンジェルかがみ」
伊乃里「ええ!? 私の心の中の天使さまが、なぜかがみさん!?」
天使かがみ「こんな時間にカステラ食べちゃダメだよ。体によくないよ」
伊乃里「あ……! そ、そうですよね!
ついカステラの欲望に負けてしまうところで(した)」
悪魔姫楽の声「本当にそれでいいのかしら、伊乃里さん?」
伊乃里「ぴぃ!? この声は……!」
悪魔姫楽「私はあなたの心の中の悪魔ーーデーモン姫楽よ。以後、お見知りおきを」
伊乃里「そ、そんな……尊敬する姫楽さんが悪魔!? どうして!?」
悪魔姫楽「ふふ。(イケボで)あなたのためなら、私は悪魔にでもなってみせるわ」
伊乃里「ズキューーン!!」
伊乃里「姫楽しゃん……! そんなこと言われたら惚れ直しちゃいますぅ……!」
悪魔姫楽「学業、レッスン、地元の手伝い……あなたは毎日頑張ってるじゃない。そのカステラはご褒美なのよ」
伊乃里「ご褒美! そ、そっかあ……。ご褒美なら食べてもいいですよね!」
天使かがみ「ダメ~!」
伊乃里「かがみさん!?」
天使かがみ「冷静になって、伊乃里さん!今食べたら絶対後悔するよ! 明日の朝に思い出して、『私なんて、どぶ池の底の泥みたいに腐ってるのがお似合いですぅ……』って自己嫌悪しちゃうよ!」
伊乃里「ひぃ!? こ、怖いこと言わないでくださいぃ~っ! やっぱり食べない方が」
悪魔姫楽「そんなことないわ。たとえ食べてしまったとしても、伊乃里さんの心は青く輝くおしどりの池よ」
伊乃里「(感動)姫楽しゃん!」
天使かがみ「ダメダメ~! 姫楽さんは甘い言葉で伊乃里さんを堕落させて、雲仙岳の地下でぐつぐつしてるマグマ溜まりに堕としちゃうつもりだよ!」
伊乃里「だから怖いですってぇ!」
悪魔姫楽「よしよし、大丈夫よ……。さあ、カステラ食べて元気出しましょう」
天使かがみ「姫楽さんっ! それ以上伊乃里さんに近づいたら、ふみふみ攻撃でぺちゃんこにしちゃうよ!」
悪魔姫楽「来るなら来なさい。洞窟風呂をも掘削するこの両手で、かがみさんのどてっぱらに風穴を開けてあげるわ」
伊乃里「(裏で焦り)えっ、えっ……!?」
天使かがみ「このクサレ悪魔めぇ……!」
悪魔姫楽「オホホホ! 無力な天使がさえずってるわ!」
伊乃里「ま、待ってくださ~~いっ!」
  かがみと姫楽、伊乃里を見る。
伊乃里「(涙目)喧嘩はやめてください! でないと私……私……おふたりを大叫喚地獄に叩き落としちゃいますよぉ!」
かがみ・姫楽「(ぽかんと)……?」
伊乃里「あ、あれ……? 怖くない……ですか?」
悪魔姫楽「伊乃里さん……私たちはあなたの心の中の存在なのよ」
天使かがみ「わたしたちを地獄に落としたら。伊乃里さんも道連れ……」
伊乃里「ひぃ!」
悪魔姫楽「でも、あなたと一緒ならどんな地獄も楽園よ」
伊乃里「ズキューン!」
天使かがみ「ウソだよ。姫楽さんは伊乃里さんを釜茹でにして、アツアツの温泉たまごにしちゃうつもりだよ」
伊乃里「ひぃいっ!」
悪魔姫楽「ふふ……。そんなことしなくたって、伊乃里さんのお肌は卵のように美しいじゃない」
伊乃里「ズキューン!」
伊乃里「はぁ……はぁ……。じょ、情緒が振り回されっぱなしです……。このままじゃ私の身がもちません~」
悪魔姫楽「あらあら。それは大変!」
天使かがみ「姫楽さん?」
悪魔姫楽「あなたは十分にカロリーを消費したわ……そんなあなたの目の前には、甘くてふわっふわのカステラ……」
伊乃里「うぅ……カステラ……!」
天使かがみ「い、伊乃里さん! ダメ!」
伊乃里「一口でいい……食べたいよぅ」
悪魔姫楽「ふふ、いいのよ……」
天使かがみ「くッ、このままじゃ……!
 仕方ない……! こうなったら、わたしですら言いたくなかった『あの暴言』を解禁するしかないかな……!」
伊乃里「うへへ。いただきまー(す)」
天使かがみ「伊乃里ちゃん! 太るよ!」
伊乃里「ぐわあああああっ!」
悪魔姫楽「ええっ!?」
天使かがみ「こんな時間に食べたら太るよ! メタボ一直線だよ! いいの?」
伊乃里「嫌ですぅ~!」
悪魔姫楽「伊乃里さん!」
天使かがみ「よし、形勢逆転……!」
悪魔姫楽「ちぃッ! かがみさん! 天使のくせになんて言葉を!!」
天使かがみ「ホントのことを言っただけだもん! さあ伊乃里さん! 今こそあの悪魔を消し炭にしちゃって!」
伊乃里「ご、ごめんなさい姫楽さん……! 私、太りたくない!」
悪魔姫楽「ま、待って!」
伊乃里「あなたとの思い出忘れません! 悪魔よ去れ! 伊乃里ちゃんビーム!」
悪魔姫楽「くあああああッ! 消えない!消えてなるものか! 何か……とびっきりの甘い言葉をーー(ハッと)ああっ! 伊乃里さん、冷蔵庫の横を見て!」
伊乃里「えっ!?」
天使かがみ「今更何を……!」
悪魔姫楽「牛乳があるわーーっ!!!」
伊乃里「はうあああっ!?」
天使かがみ「なっ!? ビームが……」
悪魔姫楽「はぁ、はぁ……ふ、ふふ……!カステラと牛乳! このコンビの相乗効果で誘惑パワーは100万倍よ!」
天使かがみ「そんな……!」
悪魔姫楽「(囁いて)ほら、伊乃里さん……カステラ、牛乳……カステラ、牛乳……カステラ、牛乳……?」
伊乃里「あっ、あっ、あっ、あっ……」
天使かがみ「伊乃里さん! 伊乃里さん!」
悪魔姫楽「(囁き)カステラ、牛乳……?」
伊乃里「かすてりゃ……ぎゅうにゅう……い、い……! いただきまーーす!」
天使かがみ「伊乃里さぁーん!?」


♨     ♨     ♨

○師範学校・中庭
伊乃里「うぅ……私はなんてことを……。私なんて、どぶ池の底の泥みたいに腐ってるのがお似合いですぅ……」
姫楽の声「あ、いたわ。伊乃里さーん」
伊乃里「ひいぃ悪魔!」
姫楽「悪魔……?」
伊乃里「はっ!? あああいえ! なんでもないです!」
かがみ「こんにちは、伊乃里さん」
伊乃里「天使様まで!?」
かがみ「天使……?」
伊乃里「あうあうあう、か、かがみさんは天使のように愛らしいなぁと……へへ」
かがみ「(きょとん)えー……?」
姫楽「(独り言)かがみさんは天使で、私は悪魔……」
かがみ「あっ、あのね、これ、伊乃里さんにプレゼント……」
伊乃里「わぁ、可愛い箱!」
かがみ「開けてみて?」
伊乃里「えへへ~嬉しいですぅ!」 
伊乃里「(愕然)って、これはァ!?」
かがみ「うん、カステラ……」
伊乃里「かすてりゃ!?」
姫楽「かがみさんがね、伊乃里さんと友達になった記念にって。二人で作ったのよ」
伊乃里「あうあうあう……」
かがみ「あ……。迷惑、だった……?」
伊乃里「そんな事ありません! じ、実は私、昨日の夜カステラを丸々一本食べてしまいまして……」
姫楽「ええ……? ダメよ、伊乃里さん。夜中に間食なんてしちゃ」
伊乃里「そ、そんなあ! 昨日と言ってること逆です!」
かがみ「でも、ちょっとくらいならいいんじゃないかな……えへへ」
伊乃里「かがみさんも! 昨日は食べるなって言ってたのにぃ」
かがみ「ふぇ……?」
伊乃里「って、違う違う! 忘れてください! とにかく! 私はその罪をそそぐまでカステラを食べるわけにはいかないんですぅ……!」
かがみ「(少し残念)そっかぁ……。みんなで食べたかったけど……」
姫楽「多少は日持ちするから、好きな時に食べてくれればいいわ」
伊乃里「あ、ありがとうございます! よかったぁ……」
伊乃里「あ……。えへへ。安心したら、お腹空いてきちゃいました」
かがみ「じー……」
伊乃里「なんです? じっと見て……」
かがみ「伊乃里さん、お腹減ったんでしょ……? だったらやっぱり……今食べてもいいんじゃないかな」
伊乃里「う……! でも、罪が」
かがみ「我慢はよくないと思う……」
伊乃里「はう! て、天使さまが、悪魔のささやきを……!」
姫楽「ダメよ、伊乃里さん。一度食べないと決めたのなら、貫き通さなきゃ」
伊乃里「悪魔が正論を~~っ!」
かがみ「美彩ねえもよく夜にお菓子食べてるし……」
姫楽「湯郷美彩さんはサッカー部でしょ?それに見合う運動をしているのよ」
伊乃里「あう、あうあうあう……!」
かがみ「ねぇ伊乃里さん、カステラ食べたいよね?」
伊乃里「食べたい!」
姫楽「本当にいいの? 伊乃里さん」
伊乃里「た……食べない!」
かがみ「食べて!」
姫楽「食べないで!」
姫楽・かがみ「どっち!?」
伊乃里「食べる……食べない……食べるぅ……食べないぃ……ふぇぇ! 神よ! このあべこべは我が罪に対する罰なのですかぁ~~!?」

Fin.

written by Ryo Yamazaki

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