story おはなし

「誕生!LUSH STAR☆」第5話 レトロな眼鏡っ子!?銀山心雪 -前編-

第4話 青春大好きスポーツ少女、指宿絵璃菜!はこちら

 あたしたち奇術研究部が新入部員の勧誘を始めて三日――。
 ついにその努力が報われる時が来た。
 なんとなんと! 今日は初めての体験入部希望者が現れたのだ!!

「さあ、みなさん! 最後はこちらのスカーフにご注目! 何の変哲もないこのスカーフをこうして丸めると~……。はいっ! 中からあたしの相棒、大丸の登場でーす!」

 あたしがスカーフを広げると、バサバサッと音を立てて銀鳩の大丸が飛び立つ。
 奇術研究部の部室内を飛び回るその姿に、三人の新入生はそれぞれ歓声を上げた。

「すごーい!! なんでなんで!? スカーフの中、何もなかったよね!?」
「う、うん。びっくりしたぁ……」
「さすが初夏先輩! “歩くエンターテイナー”ですね!!」

 ひと仕事終えた大丸が戻ってきて、あたしの手にとまる。
 入部希望の女の子たちはみんな笑顔だ。そんな彼女たちを前に、あたしは確信する。
 今日は、今日こそは――……。
 イケる!!

 ――そうだよね? 雅奈ちゃん。

 そんな思いを込めて、あたしは部室の入口に佇む和倉雅奈ちゃんを見る。
 雅奈ちゃんもあたしのことを見ていてくれたのか、すぐに目が合って――彼女はいつものように優しく微笑んだ。

 ――ええ。きっと入部してくれますよ、初夏さん。

 そう言われたような気がして、あたしはニッと笑い返した。
 うん。雅奈ちゃんの言うとおりだ! この子たちは自分から体験入部に来てくれた! しかもこんなに楽しんでくれてる! おまけにちょうど三人! 全員が入部すれば部員数が一気に五人になるから、部活としての存続は決定だ!

「楽しんでくれてありがとー! それじゃー……」

 あたしははやる気持ちを抑えて、彼女たちに向かって言った!

「ぜひぜひ!! 奇術研究部に入部しない? あたしたち、部員のみんなでアイドルユニット組もうと思ってて。みんなで一緒にアイドルも奇術も楽しんじゃおうよ!」

 その瞬間――新入生たちから笑顔が消えた。
 彼女たちは気まずそうにあたしから目を逸らすと、困ったように顔を見合わせる。
 おや? 急にどうしたんだろう……?
 そう思っていると、三人が順番に口を開いた。

「えっと……。実はあたしたち、歩くエンターテイナーって言われてる初夏先輩の手品を一度見てみたくて来ただけなんです……」
「へっ?」
「そ、そうなんです。いやあの、手品に興味はあるんですけど、来てみたら初夏先輩の手品がすごすぎて、逆に自分たちが手品を披露する想像がつかなくなったというか……」
「あはは! いやいや、そんなことないよー!」
「え~っと、つまりですね。あたしたち、その~……」
「??」

 首を傾げるあたしの前で、彼女たちは横一列に並んで気をつけの姿勢をとる。
 そして、

「「「ありがとうございましたッ!!」」」

 と、一礼して走り去ってしまった!
 な……。なんですと……!? 冷やかしーーーッ!?!?
 彼女たちを追いかける気力もなく、あたしは膝から崩れ落ちる。
 うう……。もう少し手品を簡単なものにしとけば良かったのかな? 初めて体験入部に来てくれた子たちだったから、すごいの観てもらって楽しんでもらいたいって思ってたんだけど、それが戦略ミス……!?
 頭の中であれこれ考えていると、あたしの肩にそっと手が置かれた。
 弱々しくその主を見上げる。そこには、優しくあたしを励ますような雅奈ちゃんの笑顔があった。

「初夏さん、落ち込む必要はありませんよ。入部する・しないの判断は最終的には新入生の方々の心持ち次第。だから、私たちは私たちでとにかくやるべきことをやる。頑張る。そう、約束したじゃないですか」
「雅奈ちゃん……」

 彼女の言葉に、あたしは胸のあたりがじわーっと温かくなってくる。
 そして思い出した。あたしが帆南美ちゃんに勇気をもらった、三日前の夜のこと――。

 その夜、あたしは和倉温泉にいる雅奈ちゃんを訪ね、奇術研究部を「部活」として存続させたいと思っていることを伝えた。「奇術研究部が同好会や愛好会になってしまっても仕方ない」と言っていた雅奈ちゃんととことん話し合うためだ。
 雅奈ちゃんは最初は驚いていたけれど、静かにあたしの話に耳を傾けてくれた。
 あたしたちは夜が更けるまで、二人でいろんな話をして――。
 そこで分かったのは、あたしたちはお互いに誤解していたということだ。
 雅奈ちゃんはあたしが「雅奈ちゃんのために」新入部員の勧誘を頑張っているのだと思い、そこまでしなくていいと願っていた。だからもし部員数が足りなくて奇術研究部が部活でなくなった時に、あたしがショックを受けるなんてことにならないよう、いつもの「先回り」をして、あえて悪い結果を口にすることで予防線を張ってくれていたのだ。

「初夏さんと同じく、私にとっても――あの部室で奇術研究部のみなさんと過ごした日々はかけがえのない宝物です。新入部員集め、一緒に頑張りましょうね」
「雅奈ちゃん……。うん!」
「まあ……、本音を言うと、『手品もアイドルも』なんていうやり方で新入部員が集まるかどうかは不安なんですけど」
「ええ~っ!? ちょっ……雅奈ちゃ~ん!?」
「うふふ。でも、初夏さんを信じて頑張りますわ。約束します」
「――うん。約束!」

 誤解が解けたあたしたちは、指切りげんまんをして笑い合った――。

 ――そうだ。今のあたしは一人じゃない。雅奈ちゃんがいるんだ!
 部室の床に膝をついていたあたしはシュバッと立ち上がる。「部員集めはまだまだこれから! 二人で約束したもんね!」
 すると雅奈ちゃんはにっこり微笑んで言った。

「はい♪ それに……。まだあちらにもう一人、体験入部に来た方がいらっしゃいますよ」
「えっ!? ホント!?」

 反射的に雅奈ちゃんが指差す方向を見る。
 そこには、部室の片隅でちょこんとイスに座る女の子がいた。
 うつむいているから表情はよく見えないけど、あのおかっぱ頭に丸い眼鏡――間違いない。春休みに師範学校の掲示板の前で出会った、銀山心雪ちゃんだ!

「おおーっ! 心雪ちゃん! いつのまに来てくれてたのー!?」

 あたしは途端に嬉しくなって、心雪ちゃんのもとに駆け寄る。
 でも彼女は、何を話しかけても一向に答えてくれなくて……。
 不思議に思って彼女の顔を覗き込むと――なんと! 白目を剥いているではないか!!

「心雪ちゃん!? 大丈夫!?」
「な、何もないスカーフから鳩がぁ……!? おっ、おっ……」
「お?」
「……おったまげ~……」

 そう呟いて、心雪ちゃんはガクンと意識を失った――。

「心雪ちゃあああああーーーん!!」

<続く>

著:黒須美由記

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